中出しされる女たち 改め 「ギリ と ムチ」

おバカな男女の日常

プロフィール

Author:元営業マン・2011年1月から派遣社員の後、現在は新米管理者「Y」
肺気腫を患う46歳
相変わらず懲りない男
寿命は・・・?

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辛辣

  いつもお読み頂きまして毎度ありがとうございます。

 親である自分が言うのも何だが、俺の娘○は真面目だと思う。遊んで夜遅く帰る事も無いし、熱心に勉強もしている。こちらへ来てから予備校とピアノは休ませてしまっている。大学には行かないと言うが、胸の内はどうなんだろうか…?大学へ行けるだけの学力はあるはずだ。高校を卒業したら働きたいと言う娘…○のこれからを三人で話していると…

「パパは…大学入ったのに何で途中で辞めたの…?」

 中退の本当の理由は娘に話していない。娘もサヤや俺の死んだ両親からも聞かされていないようだ。遊んでばっかりいたら単位取れなくて留年したから退学したと言った記憶がある。当時を知るよう子もいる。本当の事を話す時が来たようだ。当時の事情を詳しく娘に話した。やっぱり黙り込む娘…ずっと聞いていたよう子が…

「○ちゃん、誰も教えてくれなかったからショックだと思うけど、この話はそこで終わりじゃないのよ…まだ続きがあってさ…」

 その後の事実を包み隠さず、全部よう子が話した。過去によう子と付き合っていた事実も含めてだ。娘の口から…

「何となくそんな気がしてた…ママがそういう感じで話してたから…」

 娘のこれからを話していたが、話が違う方向へ転がり始めた。娘が抱く疑問には全て答えようと決めたが、それ以上に訊いてこようとしない娘によう子が…

「話が違う方へ行っちゃったけど、進学でも就職でもあたしは○ちゃんをサポートするよ。Y君も同じ考えだから心配要らない。迷ったり困ったりしたら、遠慮しないであたしたちに相談してよ」
「ありがとうよう子おばさん…」
「面談で進路を訊かれると思うけど、慌てて決める必要ないとあたしは思うよ」
「うん…」

 何か踏ん切りがつかない娘…素性を知らない女が目の前にいて、その女が自分をサポートすると言ってきた。戸惑うのも無理ないか…

「就職するつもりなら無理にならない程度でバイト始めればいいし、進学するつもりなら勉強すればいい。○ちゃんのやりたい事をやればいいのよ(^^)この人(俺を指差して)もそうしてきたんだしさ、気兼ねする事なんてないよ」

 真剣に聞く娘には本当に申し訳無いのだが、話の途中で手を洗いに何度か席を立っていた。R子の生々しい感触が残っていたからだ。石鹸で何度洗っても取れた気がしない。また手を洗いに席を立った。よう子が…

「トイレ?」
「手と顔…洗ってくる」
「お風呂は?」
「まだだけど…沸いてるよ」
「○ちゃん、お風呂入っちゃえば?」

 よう子が促し、娘が風呂に入った。

「ねぇ…どうかした…?」
「どうもしねぇよ…」
「あぁっ!浮気してきたでしょ?物分かりの悪い女と…(^^;)」

 したと言えばした。してないと言えばしてない。どちらとも取れる。

「物分かりの悪い女はダメって言ったじゃん(^^;)物分かりの悪さに呆れてるんでしょ?」

 ボディブローをブチ込んだとは絶対に言えない。ましてやフィストファックをやったなどと天地がひっくり返えろうとも言えない。黙り込んでしまう…

「罰として今夜は無し(^^;)正座でもして少し反省しなさい(^^)」

 正座が出来ない俺には最も厳しい罰のひとつだ…

 娘と入れ替わりでよう子が風呂へ入った。娘が…

「パパ…誰か亡くなってるの…?よう子おばさん毎日お線香あげてる…」
「よう子の子供だよ…よう子が前のご主人と結婚してた時に出来た子供さん…お腹の中で亡くなったんだそうだ…」
「死産とか流産…?」
「お腹の中で順調に育ってたらしいからそういう事になるわな…」
「悲しかっただろうね…そういう感じを全然見せないけど…」
「よう子は…そういう部分も含めてこれからも○に色々と話すだろうから嫌じゃなかったら聞いてやってくれる…?」
「いいよ…パパ、進路はいつまでに決めればいい…?4月にクラス分けがあって…進学クラスしかないけど…」
「慌てんなって言われても時間が無いか…面談までに決めればいい」
「そうする…」

 娘はスマホ片手に部屋へ入った。よう子と入れ替わりで風呂に入る。両手が赤くなるほどゴシゴシと洗うが、あの感触がどうしても抜けない。罪悪感の塊が頭の中から消えずにいた。必然的に長風呂になってしまう。よう子の声が聞こえた…

「Y君…Y君…どうかした…?」

 咄嗟にこう答えてしまった。

「正座して反省してる…」
「また膝に血が溜まっちゃうよ…早く出て…」

 ボーッと風呂から出ると…

「娘に心配かけないの(^^)パパ何か変って言ってたよ」
「○は…?」
「ヘッドホンして部屋でピアノ弾いてるよ。夜でも弾けるから電子ピアノは良いよね(^^)」
「本当は時間とか場所とか気にせず、大きいのを弾かせてやりたいんだが…」
「家を建てられたら弾かせてあげればいいじゃん。本当に進学しないならピアノも買ってあげられるかもね(^^)」
「そうだな…」

 よう子と寝室へ行き、ある事を話した。

「今って公立高校は授業料が無料なんだよな…私立でも補助金が出てる筈なんだ。それと…こども手当って何才までだっけ…?補助金とかも全部サヤの懐に入ってる…」
「こども手当は15才以下だよ。補助の事は向こうが何か言ってくるまで黙ってよ…あと2年ぐらいなんだしさ…補助金が無くても、ちゃんと学校通わせてあげられてんだから。親権はサヤさんが持ってる訳だし、ここでお金の事を持ち出したら、また向こうに関わる事になるよ…」
「なら黙ってるよ…」

 何か釈然としないが、今日の事もあったので、正座して反省する事にした。正座しようとするが、右膝がちゃんと曲がらないから変な格好になってしまう。しかもかなり痛い。

「痛っ!」
「何してんのよ?」
「正座…痛っ!」
「やめなよ!」
「反省しないと…」
「正座しなくても反省は出来るじゃない」

 以前にサヤの親父に対してよう子が言った言葉を思い出された。殴った事実は消えないと…確かにそうだと思う。この後味の悪さは一生消えない。お手軽な亡霊女に手を出した結果だ。くだらねぇ三文芝居に騙され、こっちが黄泉送りされるところだった。やり残している事はまだまだある。この世に未練もある。利己主義だが、まだ死ぬ訳にはいかない。

「反省するなら頭でも丸めてみれば(^^;)?」
「坊主頭か…シャンプー節約にもなるから明日やってくるよ…」

 頭を丸める事を決めた。

「もう寝よ…(^^;)」
「うん…」

 ベッドに潜り込むと、隣から伝わるよう子の体温と仄かに香る石鹸の匂い…枕元の暗めの灯りが照らすよう子のスッピン顔…今夜は無しと言われていて良かった。どんなに性欲を掻き立てられても、こんな気持ちのまま抱いても悲しいだけだ。仮に何かが伝わったとしても本当に伝えたい事じゃないと思う。

 よう子がゴソゴソと何かを持ち出した。何かと思えばペンとメモ帳だ。何かサラサラと書いたメモを見せてきた。そこにはこんな文字が書かれている。

『マジで何かあった?』

 筆談か…苦し紛れからこんな返答を書いた。

『今日は色々と勉強させて貰った』
『身になった?』

『なった…寝るわ…』
『おやすみ…』

 メガネを外し、枕元のライトを消し、布団をかぶり寝ようとしたが、やっぱり寝られない。ふたりで寝るには些か狭いセミダブルのベッド…左を向けばよう子がいて右を向けば壁がある。昔からうつ伏せだと寝られない。仰向けになり見えない天井を眺める…

 今日を振り返ると、本当に最悪で最低だった。R子を殴った罪悪感と自分に対する嫌悪感に苛まれながら過ぎた1日であった。よう子がいてくれたから何とかなったが、娘からの進路の相談にもキチンと答えてやれなかった。その上、人を殴るとこんな気持ちになるのかよ…吐き気すら感じる。マジで最悪だよ…

 隣からよう子の寝息が聞こえてきた。気疲れしたんだろう。ベッドを少し広くしてゆっくりと休ませてやりたい。ゴソゴソと起き出し、リビングで色々と先々の考え事…全く考えがまとまらない。不安ばかりが先に立つ。気持ちを落ち着かせる為に精神安定剤を久しぶりに飲んだ。娘の部屋から物音がする。まだ起きているようだ。ドア越しに声を掛けた。

「○…まだ起きてるか…?」
「うん…何…?」

 娘が狭い部屋から出て来た。

「進路の事…ちゃんと聞いてやれなくてごめんな…」
「よう子おばさんは…?」
「もう寝てる…遠くまで行ったから疲れたんだろ…」
「パパ…よう子おばさんの前だと訊けない事とか話せない事あって…」
「そっか…お茶でも飲むか…?」
「うん…」

 お茶を飲みながら…

「ちょっと前に進学しないってママにメールした…」
「就職に決めたのか…?」
「でも…さっきママから電話あって…」
「何だって…?何がなんでも進学しろって…?」
「ハッキリ言ってもいい…?」
「いいよ…」
「今のパパじゃ○を大学に通わせるのは経済的に無理だって…」
「ママの言う通りだ…ここから通える地元の国立とかなら何とかなると思うが、私立となるとかなり厳しい…独り暮らしをされると尚更だ…パパの今の収入だと仕送りすら難しいと思う…でもな、頼りないパパだけど、心強い味方のよう子がいる。ふたりで働けば何とかなるから。進学に必要なお金の事は心配するな」
「○は…大学にも専門学校にも行かない。行く意味がよく分かんない…大卒なのに就活に失敗してプラプラなんてヤダし、Y理お姉ちゃんも就活厳しかったって言ってたし、○は高卒でも良いからで早めに就活始めようと思ってて…」
「大卒と高卒じゃ初任給も違うし、就職してからも色んな面で大卒者が有利だし、全てにおいて優遇される。それでも良いのか?」
「構わない。それに…やりたい事は大学へ行く事じゃない…」

 俺の本心を言えば娘には大学へ行って欲しい。金の事で大学を諦めようとしているなら可哀想だし、とても心苦しい。周りの友達は進学するだろう。社会人デビューするのは大学卒業してからでも遅くない。

「やりたい事は大学卒業してからでも遅くないとは思わないのか?」
「パパね…よう子おばさんが言ってた。学歴と学力は違うって…目的も無いのに大学行って、つまんない学歴つけても意味ないと思う。それで就職出来なかったたらチョー最悪じゃん…」

 つまんない学歴かぁ…

「後で後悔しないか?」
「しないよ。それに大学に行きたくなったら働きながらでも夜間へ行けばいいし…」
「二部か…働きながらだと大変だぞ」
「パパはバイトしながら予備校に行ったってよう子おばさんがさっき言ったよ」
「それはそうだが…」

 娘の決意は固く揺るがない。決意と言うより反骨精神に近い。誰に似たんだか…

「合コンばっかやってお酒飲んで馬鹿騒ぎしてるような人になりたくない」

 いやはや…痛烈で強烈だわ…

「そう思うなら高校卒業したら頑張って働けばいい。ママの言う事は気にすんな。パパから話しとくから」
「うん」

 娘は部屋へ戻った。俺の娘がこんなに辛辣だったとは…今日初めて知った。やりたい事は音楽なのだろうか…?楽器屋で働きたいと言っていたが、特定少数を相手にする限られた職種だから狭き門になる。必ずしも求人があるとも限らない。有名楽器メーカーなら大卒が条件になるだろう。大学に入るより難しいかもしれない。高卒となると…地元の楽器店ぐらいしかない。果たして求人があるだろうか…?音楽の道に進みたいなら音大へ行くのも手だが、以前にサヤが娘に音大は無理だと言っていた。国立の教育学部の音楽科も難しいなら短大で音楽を専攻するとかもある。地元の短大なら私立だが2年だし、何とか通わせられる。恐らく娘はお金の心配をしているんだ。ならば、リフォームを暫く先延ばしするしか方法がない。寝室へ戻ったら…よう子が起きていて驚く。

「あたしが寝た隙に娘とヒソヒソ話なんて…良い度胸してるねぇ(^^)」
「ビックリさせんなよ…」
「コソコソと何を話してたのよ(^^)?」
「進学はしないそうだ。つまんねぇ学歴は要らんとさ…」
「どっかの誰かさんにそっくり…(^^)」

 やっぱり俺に似てんのか… 終
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親失格

  いつもお読み頂きまして毎度ありがとうございます。

 中出し倶楽部なるサイトの中に存在する『あなたの中出し体験談』に『美術教師に…』というタイトルで書き始めたR子との爛れた関係…その後もこのブログで爛れ具合を赤裸々に綴ってきました。
 これまで数々の非道な行為でR子を玩具にしてきたが、今回でやっと区切りがついた。何度も関係を断ち切っても時が経つと、亡霊のように現れてくるR子に手を焼いた。自分が作り上げたのだから自分で始末するのが当然。その始末の方法は自分が折れるのではなく、自分がやって来た事を貫き通して亡霊R子を黄泉送りしようとした。
 だが…本当に黄泉送りしたら、お縄を頂戴する羽目になる。だから違う形を選んだ。それが自分の手であり、その手を汚す事で成仏させようとした。その手がR子の女である部分を派手にやっちまいました。

 手を洗っていると、後ろから聞こえてきた声に振り向く…R子の身体が胎児のように丸まっていた。白い饅頭みたいに見える。その白饅頭から呻き声がした。その後、何と言ったか定かじゃないが、R子は何かを呟いていた。何となくだが、ごめんなさいと聞こえた気がする。最後までごめんなさいかよ…俺にとって苦痛でしかない。R子に渡した書類を黙って回収し、R子のケータイを探した。俺のケータイ番号と発信履歴を削除したいからだ。

 あった…スマホかよ…使い方が分からない。ゴチャゴチャとやってみたが、よく分からずに断念した。R子の番号を着信拒否にすればいいや…丸まってるR子に向かって…

「また書き込むつもりなら、これだけは言っとく。関係ない人を巻き込んだら今度こそ許さねぇぞ」

 返事すら出来ないか…さっきまで発情したオットセイのような喘ぎ声を発しながら右手をズッポリ飲み込んでいた主とは思えない。引っ越ししろとメモを書き残し、忌まわしいアパートから脱兎の如く飛び出そうとした瞬間…想定外の声がした…

「R子イキそう!Yさん!Yさん!R子の中にぃぃ!中に出してぇぇぇぇ!R子イクゥゥゥゥ!!」

 R子は現世と地獄の狭間で俺とSEXしていた…これは本格的にヤバくなってきやがった。マジで背筋が凍った。恐る恐る覗き込むと、R子は自分の指で膣内をグチョグチョと掻き回し続けていた。この女は…このままオナニーしながら有り得ない狭間を彷徨うかもしれない。自分が作り上げたmy sex dollは手の施しようがないほど心身共に蝕まれている。これは演技でも芝居でもないだろう。黒い瞳は空虚で何も見えていない。俺を見ているようだが、視線は全く合わない。幻覚が見えてるのか…?クチュクチュという音が消えた。R子の肩が小刻みに震えている。このまま目の前で死なれたらシャレにならん。

「R子!R子!」

 あまりの怖さに大声でR子の名を叫び、両手でR子の肩を揺さぶり、正気に戻そうとした。焦る俺とグッタリするR子…俺の表情は強張り、R子の表情は恍惚に満ちていた。俺は怖さから冷や汗をかき、R子は悦びに満ち溢れた汗をかく。ゆっくりとR子の口から言葉が出始めた…

「いつもあたしばっかりイッちゃって…ごめんなさい…最後は気持ち良すぎて…あの…妊娠してもYさんに絶対迷惑掛けませんから…」

 身体の震えが止まらない。フェラチオもさせてない。SEXもしてない。中出しもしていない。勃起すらしていない。俺の記憶は絶対に抜けてない。俺はR子の膣内に右手をブチ込んだだけなのだ。亡霊を黄泉送りするどころか、錯乱した亡霊に俺が黄泉送りされる寸前まで追い込まれる…妄想と現実の区別がつかなくなったR子はその後も数々の信じられない言葉を吐き続けた…

「今度…また温泉に行きませんか…?前に行ったのが忘れられなくて…思い出しちゃうんです…」

 過去の記憶を辿ると、確かにR子とのSEXに溺れる為に一泊で温泉に行った。

「ここで待ってる時も…準備室で待ってる時も…あたし…何かダメで…」

 話の内容がゴチャゴチャだ。文脈も繋がらず意味も分からない。無表情で発せられる支離滅裂な言動に本気で薬物による中毒を疑った。R子の視点が定まらないからだ。注射痕なんかあったら最悪だろう。R子の腕を強く掴んで探してしまう…

「痛っ!やめて…Yさんやめて…」

 注射痕などある訳も無い。今度は俺の頭の中がゴチャゴチャになる。とにかく整理して考えた。今までやってきた事がずっとR子のストレスになっていて、さっきの右手ブチ込みで一気に噴き出したと考えられる。可哀想だが、このまま放置して逃げるしかない。後の事など考えても仕方ないのだ。

 掴んだR子の腕を離して帰ろうとしたら、信じられない握力で俺の右腕を掴まれる。

「帰らないで…」

 掴まれた腕を振り解こうとした。R子は身体ごと絡みつき、俺の右腕を巻き込んで肘の関節を逆に決められる。偶然なのか故意なのか…痛めている右肘に肥えたR子の全体重が…ヤバイ!肘が折れる!

「R子やめろ!折れる!」

 俺は床に突っ伏していた…右肩から右腕にかけてR子の身体が乗っかっている。床にゴリッと擦れる度、キリッと来る痛み…

「痛ぇ…頼むからやめてくれ…」
「えっ!」
「やめてくれ…」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」

 女を玩具にすると、鼻の骨を折られ、腕の骨をへし折られるのか…この歳まで知らなかった。ひとつ勉強になったよ。

 折れる寸前で圧迫感から解放される。

「ごめんなさい…大丈夫ですか…」
「R子…人は大丈夫かって訊かれると大丈夫って答えんだ…」

 右腕の状態を確認する。肘が少し痛い。ちょっとすれば痛みも消えるだろう。コキコキと肘を曲げて問題ない事を確認する。右肩を回そうとしたら…ズキッと鋭い痛みが走った。痛っ…痛くて右腕が胸より上に上がらない。痛めたか…?それとも四十肩…?何れせよ利き腕をやられたか…面倒くせぇ事になった。

「あの…」
「何ですか?」
「ごめんなさい…わざとじゃなかったんです…」
「そんなのどうでもいいです。謝って欲しい訳じゃありませんので。サッサと服着て下さい」
「あの…」
「だから何ですか?聞いてるとイライラします!」
「来週で構わないんですけど…50号のキャンバス1枚お願い出来ますか…Yさんが手張りしたのが欲しいんです…張り加減が良くて描きやすいから…」

 何だと…!?唖然とした…いくら何でも俺がその仕事を辞めたのは知ってる筈だ。狂ったふりの芝居かよ…騙しやがって…なかなかやるわぁR子ちゃん…俺の返答によってR子は何と返してくるか…?その話に乗っかってやるよ。さっきは思いっ切り乗っかられたしね…

「布目は如何なさいますか?それとサイズはF50号で宜しいでしょうか?」
「荒目がいいかな…P50号でもいいですか…?」

 R子ちゃん迫真の演技…これが本当に芝居なら主演女優賞だよ。

「申し訳ございませんが、右手がこれじゃ張れないので、メーカーが張った物で宜しいでしょうか?」
「ごめんなさい…Yさんの手が治るまで待ってもいいですか…本当にごめんなさい…」

 これが芝居なのか…?いや、俺が辞めた事は絶対に知っている。この悪意に満ちた言葉の真意は何だ?

「肩も腕も上がりません。手張りは無理です。それに画材屋は…」
「あの…会社で何かあったんですか…?」

 これがマジならR子は本当に病院へ通う必要がある。ギャラリーで会った時は仕事を辞めたのを知っていた。さっきも離婚の事実を知っていたのだから。

「申し訳ございませんが、キャンバスは他からお買い求め下さい。それでは失礼します…」
「あの…本当に大丈夫ですか…?右手…」

 俺の右腕を取り、右手を撫で始めた。

「早く服を着た方がいい」

 撫でるのをやめないR子に対して腹が立ち始めた…

「やめて下さい」

 嫌悪感を露わにする。立ち上がり、帰ろうとしたら撫でるのをやめたが、俺の指に自分の指を絡ませ始めた。

「こういう事はやめた方がいい。彼氏がいるんだから…」
「彼氏なんていません…」
 つまらん三文芝居に付き合っちまった。最後の最後まで分からねぇ女だ。

 真意を探ろうとR子の目を見た。俺を見透かしたような目をしてやがる。

「今は…」
「何…?」

 俺の右手を取り、自分の唇に当てるR子…そのまま口に含み、人差し指と中指をズボズボとしゃぶり始めやがった。生温かくてヌルヌルの感触に嫌気が差す。こんな行為で何かがどうにかなる訳がない。まだ見透かしたような目で見てやがる。2本の指をズボズボしゃぶったと思えば、指の付け根をチロチロと舐め、薄ら笑いを浮かべていた。腹が立つやら薄気味悪いやら…怒りが先に立った。

「やめねぇか!」

 空いてる左手を握り締めた。

『バフッ!ゴホッ!ウグッ!ウゥゥゥゥ…』

 R子の弛んで柔らかい腹に俺の左拳がめり込んだ。間合い・角度・深さ…全てドンピシャのボディブローが突き刺さっていた。今度はその場にR子が突っ伏す。床に沈んだR子の側頭部を危うく痛めている右足で蹴り上げてしまいそうになる。これ以上は必要ない!自重だ!自重しなきゃ!

「ウッ…ウッ…ウゥゥゥ…」

 またもや白饅頭と化すR子…左手には生々しい感触が残り、心には途方もない罪悪感が残った。

「何故ですか…何故ですか…」
「うるせぇ!つまんねぇ未練なんて残してんじゃねぇ!」

 脱兎の如く飛び出した。単車に跨っても震える手足…鼓動が早い心臓…暴力とは本当に後味が悪い。こんな事で亡霊を本当に黄泉送り出来ただろうか…?

 マンション到着…両手に残った亡霊の感触を洗い流した。時間は夕方の6時を回っている。ほどなく娘が帰ってきた。食事の支度をしようとするが、どうしても手が進まない。動きの悪いこの汚れた手で料理して娘に食べさせるなんて…よう子にメールする。戻りは午後8時過ぎになるという。食事は要らないと書かれていた。娘に尋ねる。

「○…晩飯は何か食べに行こうか…」
「よう子おばさんは?」
「遅いみてぇ…あっ!車が無いのか…」
「コンビニでもいい。歩いて行けるし」
「悪いな…」

 親子ふたりで近くのコンビニまでトボトボ歩く。弁当などを買い込み、テコテコ帰る。娘が…

「パパ…来月ぐらいに学校で面談ある…」
「三者面談…?」
「うん…」
「進路の事だな…分かった。その日は休み取るよ。ママは知ってんのか?」
「言ってない…絶対大学行けって言うから…」
「○は…どうしたい?」
「よく分かんない…どうしても行く必要あるのかな…?」
「大学に行く目的や理由があるなら行きなさい。勉強なら大学に限る必要はないと思うけどな…専門学校だってあるし、就職でも構わないと思うぞ」
「よう子おばさんに聞いてみようかな…」
「よう子が帰ってきたら三人で話してみよう」

 食事をしながらマンションでよう子の帰りを待った。右手が痛くて動きも悪い。仕方なく左手で食べていると…

「パパ、右手どうしたの…?」
「動かすと痛くてさ…それよりママは何か言ってたか?」
「色々訊かれた…あっ!ママから伝言。『K先生』って人がパパから電話欲しいって」
「K先生…?あっ!Kちゃんか…(サヤの元同僚である例のエロ美術教師)分かった。電話しとく」

 娘とよう子の帰りを待つ。8時過ぎによう子が戻ってきた。

「ただいま。遅くなってごめんね」
「お帰り。お疲れ様」
「晩御飯は?」
「悪いけど○と先に食べたよ。よう子は?」
「あんまりお腹すいてないんだ。色々食べちゃってさ」
「お茶でも飲もうか」
「よう子おばさん、お帰りなさい…(^_^;)」
「ただいま(^^)○ちゃんにお土産だよ」
「あっ!苺!チョー美味しそう(^^)」

 よう子が苺を洗ってヘタを取り、紅茶を淹れてくれた。

「よう子…○が相談したい事があるみたい。乗ってやってくんねぇか?」
「いいよ(^^)何?」

 遅くまで進路について話した。娘は進学せずに就職したいと言っている。通う高校は進学校…娘はバイトの経験は無い。もしかしたら娘は金の心配をしているのかもしれない。アドバイスも出来ず親失格だな… 続

懲りない女

  いつもお読み頂きまして毎度ありがとうございます。

 前回更新分で、陰口と誹謗中傷と綴りましたが、会社での事は誹謗中傷だけだと思います。しかし、もうひとつの事は陰口と誹謗中傷の両方でありました。自分「Y」に対する陰口と、ある人に対しての誹謗中傷…自分への陰口だけなら許せるが、ある人への誹謗中傷は許せない。事実無根の中傷が度を超えていた。

 その発信源は…あのR子だ。ある方から知らされ、己自身の耳を疑い、事実を確認した時、己自身の目を疑い、事実だと認識した時、激しい憎悪を感じた。

 やるねぇR子ちゃん…なかなか面白いわぁ…昔の事とは無関係の他人まで巻き込むとは…仕事の忙しさや膝の痛みを忘れてしまう程だった。

 事実無根の部分は訂正して貰う。中傷された人物が、この事実に気付いていないと思うので、気付く前に処理しなければならない。担当する現場が始まる前にケリつけてやる。

 ある土曜日…よう子は用事で出掛け、娘はサヤに会う為に出掛けた。俺は病院へ行くが、その後は空いている。よう子と娘が帰宅するまでに亡霊R子を成仏させるしかない。あの忌まわしいアパートに足を向けた。留守なら帰るつもりだったが、幸か不幸か、R子ちゃんは御在宅…お世辞にもキレイとは言い難い車がある。新進気鋭の若手女流作家様ですから、作家活動に余念がないのでしょう。

 ドアの前に立つ…インターホンを押す指が震えた。考えを改めようか…?間違いは間違いだと厳しく教えるべきか…?ここは引き下がれない。後者を選択した。

「はい…」
「Yです…先日、お約束しました通り、お詫びに伺いました…」

 招かざる訪問客に押し黙ったままの亡霊R子…影すら見せようとしない。部屋に誰かいる…?男でも居たら面白い。過去の事実でも暴露してやろうか…

「R子先生、お忙しいようで何よりです。自分も空気ぐらい読めるので…ドアに詫び状を挟みましたので、お手透きになりましたら、御一読下されば…それでは失礼させて頂きます。色々とご迷惑をお掛けして本当に申し訳ありませんでした」

 俺のケータイ番号のメモと、詫び状とは名ばかりのある書類のコピーを封筒に入れ、ドアに挟んで帰る事にした。このコピーを見れば、少なくともR子は震え上がる。数日中には俺のケータイに連絡が入る筈だ。単車に跨り、マンションを目指した。

 途中、コンビニで温かいコーヒーでもと思い、ミ○スト○プに立ち寄る。束の間の暖を取り、よう子に連絡しようとしたら、着信ありとの表示…知らないケータイ番号だ。どこかの監督さん…?それともR子…?念の為、折り返してみると…

「もしもし…あの…」

 声で分かった。やはりR子か…随分と素早いわなぁ…知らぬふりをする。

「このケータイにそちら様から着信があったようですが、番号に心当たりがないものですから折り返しました。失礼ですが、どちら様でしょうか?」
「Yさん…R子です…」
「Yじゃありません。正確には女なら誰でもOKのYと申します。そう書かれていましたので」
「……」
「何の御用でしょうか?謝罪の言葉が足りなかったでしょうか?」
「……」
「お手元にある書類の件ですか?それってどうなんですかねぇ…俺の事だけなら黙ってましたが、全く無関係の人まで中傷されると、黙っていられない質なので…こんな事やって面白いですか?今までの恨みでも晴らすおつもりですか?新進気鋭の作家さんはそんなに暇なんですか?面白半分で書かれたんでしょうが、そこに書かれた全く無関係な方は…それを見たらどう思いますかねぇ…その方には書かれた事実を俺から伝えておきますので。それでは…」

「待って下さい!すぐ消しますから!」
「消せば全部消えるとお思いですか?そんな甘ぇモンじゃありませんよ」
「すぐ消しますから!すぐ消しますから!」

 はいそうですか…って訳にはいかんよ。

「先生は軽い気持ちでやったんでしょうが、これは冗談じゃ済まされない事です」
「ごめんなさい…ごめんなさい…今からって空いてませんか…?会って話せませんか…?キチンと謝りたいんです…」
「とても無理だし、猛烈に嫌ですし、空いてません。それに俺と会うという事がどれだけ危ないか分かりますよね?」
「……」

 身の程知らずも甚だしい。

「どうせアパートに引きずり込んで誤魔化すつもりなんでしょ。SEXに釣られるほど甘かねぇよ」
「そんなつもり…」
「心の中じゃあるんでしょ。陰口叩いて全く無関係の人間を中傷した挙げ句、それをSEXでチャラにしようなんて虫が良すぎませんか?」
「……」
「SEXなら活きの良い生徒とでもやって下さい。準備室に引きずり込んでしゃぶってやれば?俺と違って何十発でもイケちゃうでしょうから。ついでに先生の大好きなバイブでも握ってると最高ですね。精々、捕まんないように…中傷された事実は本人に話しておきますので、それなりのお覚悟を…それでは…」

 耳元からケータイを離すと、何かを叫んでいる亡霊の声がケータイから響いていた。

「何をそんなにギャアギャア叫んでるんですか?耳が痛いのでやめてくれます?それでなくても膝が痛いんで」
「あの…本当に謝りたいんです…」
「謝るのなら中傷した方に直接謝罪して下さい。それが筋だと思います」
「……」

 中傷された方を今は明かせないが、そんなの出来る訳がない。

「まぁ、相手が相手だし、そんなの出来ねぇわなぁ…まぁ、謝って済む問題でもありませんしね。友達や知り合いと面白可笑しくやってたんでしょうが、これは中傷された方からお金を請求されても何ら不思議はありませんよ。認識が甘いですね」
「本当にごめんなさい…Yさんの前で消しますから来てくれませんか…」
「俺を呼びつけて謝るおつもりですか?見当違いの上、非常識すぎますね。重ねて申し上げるようですが、中傷した相手方に行って謝るのが本当だと思います」
「出来ないからお願いしてるんです…」

 駄目押しするか…

「それじゃお邪魔しますか…?」
「すみません…お願いします…ごめんなさい…」
「それじゃ30分後に…」

 電話を切ると、すぐさまよう子から電話が入った。

「誰かと話してた?」
「うん…ちょっとな…」
「さっき○ちゃんから電話あってさ、少し遅くなるって。サヤさんに色々訊かれてるみたい」
「探り入れてんだろ…」
「あたしも少し遅いかも…?ひとりなんだし、たまには羽根伸ばしてくれば?」
「それも良いけど、羽根伸ばす前に膝伸ばしやんないと…」
「上手いねぇ!座布団1枚(^^)!」
「からかうなよ…」
「たまにはさ、物分かりの悪い女とでも遊んでくれば?」

 鋭ぇ…あまりの鋭さにビビる…

「帰ったら曲げ伸ばし手伝うからさ、少しのんびりしてきなさいよ(^^)バイク気を付けてね」

 電話は切れた。鋭い女の勘に肝を冷やす…遊んでこいかぁ…よう子は虚勢を張ったんだろう。咄嗟に折り返した。

「あれ!?どうかした?何か言い忘れたぁ?」
「周りに誰かいる…?ちょっと話したい事あって…」
「ちょっと待ってね。外に出るから」

 よう子は隣県にある親戚の法事に出掛けていた。

「お待たせ。いいよ。何?」
「本当は俺も行かなきゃなんないんだよな…」
「親戚デビューなんていつでもいいよ。親戚っていっても遠いしさ(距離と縁)」
「次は俺も行って挨拶するよ」
「そう思うならそうしよ(^^)」
「それと…今夜なんだけど…」
「何?物分かりの悪い女の所にでも泊まりたいとか…?」
「そうじゃなくて…今夜いいか…?」
「えっ…!?○ちゃんいるよ…」
「まぁ、それは…これからもずっとそうだし…」
「気にしないならいいよ…もっと深刻な話かと思っちゃったでしょ(^^)遅くなると思うけど、なるべく早く帰るね」
「ギリギリまで待ってるのもいいかなと思う…」
「物分かりの悪い女と遊んでくればいいのに」
「それじゃ…皆さんに宜しくな…」

 電話を切った。今夜よう子と過ごす。亡霊は邪魔なだけなので、きっちり西方浄土へ送るか…阿弥陀如来にしっかり導いて貰えや。成仏せぇよ…

 35分後、アパート到着…

「先生、Yです…」

 カチャンと鍵を開ける音…ドアが開くと、そこにはやはり亡霊の姿があった。真冬のホラーが始まりを告げる。亡霊の声が震えていた。

「ど…う…ぞ…」
「膝が痛くて床とかに座れないので…」
「あ……の……ソファーに……」

 昔の俺専用ソファーにゆっくり腰掛けた。

「本当に……ごめんなさい……悪気が……あった訳じゃ……なくて……」

 悪気がないだと…?ふざけるなよ…言葉が途切れ途切れで聞き取り難くイライラした。

「俺に謝っても仕方ないと思いますがね」
「今すぐ……消しますから……」

 R子はSNSと言われるソーシャルネットワークサービスに、俺とある人物の陰口と誹謗中傷を書き込んだのだ。消そうとしているR子に…

「それを読んだ人達の中には俺の知り合いや昔のお客様もいます。その人達からの問いに対して事実無根の答えを書き、R子と全く関係無い人を中傷した訳ですよね。その文面を削除しても、その文面を読んだ人達の記憶まで削除出来ますか?」
「ごめんなさい…今までのは全部ウソだったって書きます…ごめんなさい…」

 30歳を過ぎた大人の女とは思えない精神的な幼稚さ…SEXだけ部分なら構わんが、それ以外の部分は困る。仕込み過ぎたか…成仏して貰うしか手立てがないな…

「とりあえず消せ!すぐ閉鎖しろ!」

 R子は言う通りにした。

「それでこれからどうすんの?」
「……」
「これで済んだとか思ってんの?」
「……」

 何も答えないR子…答えたくても答えられないでしょう。

「ここに住んでる限り、俺から逃げられませんよ。書く前に引っ越すべきでしたね」
「本当に…ごめんなさい…」
「だからさぁ謝る相手が違うでしょ」
「……」
「見ない間に随分と肥えたようだから、罰として断食でもして下さい。ついでに断自慰したらどうです?禁欲生活も悪くないですよ」
「……」

 即身成仏なっちまうかもしれんな…それしにても寒い部屋だ。膝が痛ぇわ…

「R子、熱めのお湯とタオル持ってこい」

 タオルで膝を温める。適度に温まったところで、サポーターの上から使い捨てカイロを貼り付け、帰る事にする。

「R子、俺はやられたらやり返す主義なので、SNS上にR子の実名公表して住所・年齢・職業・ケータイ番号・メアド公開してエロ写真掲載しましょう。愛用のバイブとローターもセットでね。ドMでオールOKの何でもアリ女とでも書いておきますから。潮吹きまくれば、少しも痩せんじゃないですか?良いダイエットになりますよ。それじゃ…」
「待って!待って下さい!」

 今までなら泣きを入れてきたのに、涙すら見せず抵抗してきた。さてと…仕上げの時間だ。現世にある未練など、護摩焚きでもして全部葬り去るか…

「本当に物分かりの悪いお人だ…隠してあるバイブとか全部出せ!」
「えっ…」
「早く出せ!」
「あっ…ありません…捨てたんです…」

 目が泳いでやがる。シラを切るなら、もう少し上手く切ろうよR子ちゃん…目の前で家捜しする。

「やめて下さい!やめて下さい!」

 簡単にゴロゴロ出て来る派手な下着と道具類…初めて目にするバイブもあった。なかなかエグいヤツだわ…それ以外にも見た事の無い玩具がある。なんだかんだ言っても自分で買ってるじゃんか。それとも今度の男の趣味?

「なんだかんだ言っても相変わらず持ってるねぇ…今すぐ使ってやろうか?」
「あの…付き合ってる人がいるんです…もう前みたいな事は…出来ないんです…だから…」

 男がいると言うR子…それが…?だから何…?

「そんなの俺が知ったこっちゃねぇよ」
「Yさんだって付き合ってる人がいるじゃないですか…この前、一緒にいましたよね…」
「付き合ってる人じゃねぇよ。三十路も半ばなんだから、そろそろ物分かりが良くなりましょうか。R子ちゃん…」

 初めてR子ちゃんと呼んだ。何をされるか分からない展開に震え上がるR子がいた。 続

指名

  いつもお読み頂きまして毎度ありがとうございます。

 翌朝…単車に跨り、現場へ急行する。この時期なら毎度の事だが、寒さで鼻水が垂れ、身体は凍えて手は悴む。手袋も膝に当てた使い捨てカイロも役に立たない。この年齢で単車に跨るのは年寄りの冷や水なんでしょう。怒鳴られる準備をして現場到着…やっぱり開口一番で怒鳴られた。受けた現場が全く進んでいない。というか、全くの手付かず…これでどうすんだよ…

「今すぐ職人手配して現場入れろ(怒)!後工程が全然進まねぇじゃねぇか!他の職人待たしてんだぞ!ペナルティで違約金と始末書だ(怒)!」

 本来ならボンクラ所長に即連絡なんだろうが、すっ飛ばして本社の工事部へ連絡した。工事部の部長をお願いする。

『○○営業所のYです。職方を早急に手配して頂けないでしょうか。出来れば今日の午後には現場に入れたいんです。お願いします』
『いきなり何だ?』
『○○さんの現場をずっとほったらかしてたようで…』
『何の仕事だ?所長は?担当者は?』

 請け負った内容を話し…

『もう話になりません。こちらでも色々な方面に当たりましたが、誰もいません。とにかく今日入れて頂きたいのですが』
『その仕事だけじゃ無理だ。普通の職人なら誰もやらん。それに今日の今日は無理だ。何とか待って貰えないのか?』
『無理です。これだけほったらかしてやれないじゃ済まないと思います。緊急事態なので今すぐ手配をお願い出来ないでしょうか。自分が現場で待ってますので早急に連絡を頂けませんか』
『分かった。今から工事部の人間を何人か向かわせる。材料は?』
『入ってます。それではお待ちしておりますので』

 15分後、ボンクラ所長から連絡が入った。

『部長から聞いた。そんなに切羽詰まってんの?』

 平和な人だな…

『仕事が終わっても始末書と違約金だそうです。Wに言っといて下さい』
『そこまでなってるのに何で言わねぇの?』
『自分が毎日書いてお渡してる連絡ノート見てないのですか?活字で表して口頭で伝えても忙しいってだけで片付けたのは誰ですか?工事部の人が来るまで準備だけでもしますので』
『膝は大丈夫なの?』
『大丈夫じゃありません。W連れて手伝いに来て下さい』
『W君は体調不良で休みなんだよ』
『そうですか…始末書と違約金の件、部長と話して処理だけお願いします。現場は俺がやりますんで…』

 せめてW本人から事情ぐらい聞けやボンクラ…シカトした罰だ。始末書ぐらい当然だよ。Wの欠勤はズル休みに決まってる。パチンコ好きの野郎だから店にでも並んでんだろう。

 本社工事部の連中が到着…工事は2日間で終了した。面倒くさくて手間にもならない仕事だから誰もやらんと言うが、それも仕事だ。これからもあるだろう。俺を怒鳴り散らした監督に…

「色々と大変なご迷惑をお掛けしまして申し訳ございませんでした。以後、気を付けますので…」
「結局、Wは来ねぇのかよ」
「そういう人だと思うしかないですね…お恥ずかしい限りです」
「Yさんはどんなポジションなのよ?」
「ポジション…!?」
「どこ(ハウスメーカー)の現場見てんの?」
「ただの電話番です…」
「事務?」
「雑用ですか…膝が悪いので…足場にも上がれませんし…」
「上がってたじゃん」
「今回は別なので…」
「次からウチの担当やってよ。上にも他の監督にも話しとくからさ」

 冗談でしょ…!?

「それは会社が決める事ですから…それでは…」

 何とかWの尻拭いを終わらせた。たったの2日間でもグッタリ疲れた…会社は始末書を取られたようだが、違約金だけは免れたようだ。後から知った事だが、俺が話した工事部の部長は本社の常務取締役でもある人らしい。お偉いさんかぁ…偉い御方にエラい命令しちゃったわ…

 それから数日後、その常務取締役である工事部の部長が俺のいる営業所に現れる。Wと所長がお叱りを受けていた。当然でしょうね。そこへ俺も呼ばれる。Wが…

「Yさん、この前はすんませ~ん。風邪が酷くてさ~」

 風邪だと…?シカトしてずっとズル休みしてたんでしょ。ピンピンしてるじゃんか。診断書持ってこいよ。相変わらず、反省の色が見えない奴だ。俺が社長ならお前はクビだよ。その前に採用しないか…

「金輪際、こんな事はやらないで下さい。尻拭いは御免ですし、信用はお金じゃ買えませんから…」

 俺はWだけに言ったんじゃない。ボンクラ所長さん、あんたもだよ。部下の不始末なんだから上司が出向いて行くべき。このバカふたりにつける薬は無いわ…ふたりは仕事に戻った。

「それだけでしたら自分も仕事に戻っても宜しいでしょうか?」

 常務殿が…

「膝はどうだ?」
「ボチボチです。まだ痛みますが…」
「職務経歴書を見せて貰った。長いこと営業やってたようだな。何を売ってたんだ?」

 今更、面接してもしょうがないでしょ。昔の事は忘れたよ…

「学校教材ですか…」
「営業やってたから人当たりも良い訳だ」
「良いかどうかは分かりませんが…」
「何で工事管理者に応募してきた?営業も募集してたぞ」
「偶々、目に入ったので…」
「今回トラブルの起きた現場を見てどう思った?」
「最終的に現場とのコミュニケーションが不足していたと思います。現場の仕事でも相手は人なので…現場に来ない・現場に行こうともしない・連絡すらしない・話そうともしない・職方も手配しない・こちらの言う事にも耳を貸さない・相手が誰かも分からない・これじゃやって頂く職方さんにも申し訳ないと思いますし、自分も困ると思います。だから結果的に逃げるようになったのだと…」
「Y君ならそのコミュニケーションとやらをどう取る?」
「自分は現場の素人なので…自分が納得するまで尋ねました。訊かれた方はウンザリだったでしょうが…常務、少々お待ち頂けますか」

 今まで描いてきた現場の絵を持ってきて見せた。

「何だこれ?自分で描いたのか?」
「はい…」
「写真で十分だろ」
「仰る通りですが、相手に尋ねながらこれを描く事で話す機会も増えるんですよ」
「ほぉ~今までウチにいなかったタイプだな。○○さん(トラブルの現場)が担当者をY君にと言ってきたのも分かるな」
「そういうお話があるのでしょうか…?」
「ある。俺に直接連絡があった」
「自分は不適格だと思います」
「何故?」
「他人任せにしましたから…自分が現場に行くと言った以上、自分で職方を手配して現場に入れなければならないと思います。今回は常務に丸投げしただけですから。それに自分は素人なので…」
「その素人は素人なりにやった。その結果、向こうもY君を指名してきた。ありがたいと思え。膝が大丈夫ならやってくれるか?」

 指名か…ありがたい事なんだろうが…

「○○さんなら屋根・外壁・防水・雨樋・板金の仕事がまとめて来る。払いも良い。職方さえ確保してればウチにとしても旨味のある話だ。やってくれるよな?」

 疑問符が付いたが、これは業務命令だ。それも常務取締役からの直々の命…この会社に居座り続けるならば、断る事は出来ないだろう。

「担当するとしても職方さんの数が足りません。今の数では後々必ず厳しくなります。それに正直申し上げますと、安心して任せられる職方さんが少ないと感じます。今回のトラブルも、やってくれないのではなく、やれる人がいなかったのも原因じゃないでしょうか」
「そう思うなら自分で探せ。自分の足で探すのも勉強だ。そこでコミュニケーションも生まれる思うがな。今は忙しいから簡単には見つからないと思うが、それも管理者の仕事だ」

 無理難題とは言わんが、先々を考えたら解決しなきゃならん部分だ。

「かしこまりました」
「仕事の重さは金の重さだ。内勤の今の給料じゃ生活も苦しいだろ。責任ある仕事をこなして、それなりの金を貰え。嫁さんと子供がいるなら尚更だ」

 結局、渋々担当者を引き受けさせられた。外壁・防水は職方がいるが、信頼出来る瓦屋と板金屋がいない。次の現場から俺が担当者…早急に探さねば…俺を怒鳴り散らした監督に連絡してみる。

『先日、現場に伺いましたYです。○○さんでしょうか?』
『この前はどうも。部長から聞いた?』
『はい…』
『次の現場から頼みますよ』
『いつ頃になりますでしょうか?』
『着工は1ヶ月ぐらい先かな。他にも物件あるよ。今度、事務所来てよ』
『かしこまりました。新任のご挨拶もさせて頂かないと…』

 次の週、事務所に伺ってご挨拶…

『これから先の現場は全部Yさんが見てくれんでしょ?』
『はい。自分がしっかりと見ますので』
『忙しくなると思うよ。とりあえず5件あるから。これが一番先』

 図面を渡された。

『瓦屋と板金屋、いつも来てる人じゃねぇ違う職人にしてくれる?』
『探してみます』

 ハウスメーカーの事務所を後にした。営業所へ戻り、本社の積算部に連絡…FAXで送られてきた積算額を見ると…いつもより瓦葺きと板金工事の手間賃が高い。何故だ…?勾配割増と記されている。勾配割増…?図面を見ると…屋根の勾配が急だ。勾配が急であれば手間賃が割増になるって事か…勾配は8寸4分と表されている。素人の俺でも分かった。この現場は時間と手間が掛かる。膝の悪い素人は屋根にも上がれないだろう。どうする…?

 そこへボンクラ所長が帰って来た。図面を見るなり…

「8寸4分ねぇ…誰もやりたがらねぇわ…なかなか決まんねぇから早めに手配した方が良いよ」

 それだけ言い残し、誰かと電話で話しながら笑ってる…所詮は他人事か…監督はいつもと違う職人を入れてくれと言っていたが、とりあえず抱えている職方さんに連絡してみる。勾配を言った瞬間、当たり前のように断られた。割増を貰っても割に合わないと口を揃える。とにかく全滅だ…そんなに安いのか…?

「誰もやんないよ。その手間じゃさぁ」

 ボンクラが皮肉っぽく言ってきやがった。心の中じゃ笑ってんだろうな…

「他にいないか当たってみます」
「ウチにはいないと思うよ」
「別な人を探してみます…」
「早く見つけないとねぇ…始末書二度も書きたくないしさぁ」

 悔しくて怒りが爆発寸前だった。このボンクラは俺の上司なんだよね…?こんなボンクラ相手にキレてどうする…?頭を冷やそう。

「あっ…時間過ぎてる…お先に失礼します。お疲れ様でした。膝が痛ぇなぁ…」

 嫌味を言い放って帰る…明日から職人探しだ。タウンページか…?具体的に思い付くのはそれだけだ。他に手立てはあるのか…?だが、必ず探し出してやる!

 マンション到着…娘とよう子が食事を待っていてくれた。

「Y君お帰り(^^)遅かったね」
「パパ、お帰りなさい…(^_^;)」
「ただいま…」
「連絡くれないから冷めちゃったでしょ(^^)」
「ごめんごめん…」
「明日休みだよね?」
「うん…」
「仕事…?」
「休みだけど…瓦屋と板金屋を探さないとなんないんだ…」
「何で?」
「前に話したけど、もうすぐ現場に出るんだ…任される現場に入れる職人さんがいない」
「人手不足?」
「いや…勾配が急で…やってくれる人がまだ見つかってないんだ…出来れば、新しい人にやってもらいたいと思って…」
「だったらさ、建ててる現場行って連れて来ちゃえば?スカウトだよ!スカウト(^^)!」

 スカウト…考えもしなかった。ルール違反にはならないだろうか…?手間は安いと見た。連れる要素はかなり少ない。可能性は薄いだろう。上手くフリーエージェントとかしてくれればいいが…しかし、FAには金が掛かる。大型補強には大金が必要だ。その金が用意出来ないなら、どこぞの球団のようにエースナンバー18番を提示するか…終身雇用を持ち出すか…何か惹き付ける魅力ある物を用意せねば…

 現在、まだ職方は見つかっていない。約3週間後に着工される。それまでにオールクリアを行うつもりでおります。文頭に書いたもうひとつがとても厄介ですが…もう厚顔無恥の給料泥棒とは言わせないよ。常務曰わく、仕事の重さが金の重さだと…ならばそれ相当の働きで、それ相当の報酬を受け取るまでよ。終

悲劇の始まり

  いつもお読み頂きまして毎度ありがとうございます。

 1月2日…娘に家をリフォームするか新築を考えていると話した。こっちから通学しても構わないとも伝えた。通学時間を考えると少々厳しい。それにこればかりはサヤに承諾を得なければならない。娘にも必ず負担が行く。サヤは納得するだろうか…?冬休みが終わる前に話す必要がある。

「○、午後からお祖母ちゃんの墓参りに行こうか」

 娘を連れて墓参りに行く。よう子には留守番を頼んだ。墓参りを終えてサヤに連絡する。

「Yです…○の事だけど…」
「こっちへ早く帰らせて」
「その事でちょっと話ある」
「何…?」
「暫くこっちから通学させたい」
「何なのそれ!○にどれだけの負担になるか分からないの?」
「余所者扱いされて○も疑心暗鬼になってんだ。キチンと通わせるから認めてくんねぇか?」

 無言の抵抗をみせるサヤ…全く言葉を発しない。

「冬休み中に荷物とか取りにお邪魔します」

 すぐさま取りに行ったが、全く相手にされず門前払い…意地でも渡さないらしい。ならば実力行使しかあるまい。娘に事実を話すと…自分で取りに行くと言う。小物は何回かに分けて持ってくればいいが、大きい物は難しい。よう子が心配していた。

「ひとりで大丈夫かなぁ…」

 昔の義父に連絡する。

「Yです…」
「何の用だ?」
「○がこっちから通学したいと言ってます。本人の気持ちを尊重して貰えないでしょうか」
「ふざけるな!」
「○に戻って来るなと仰いましたよね。そういう事を言っておきながら今更ゴチャゴチャ言うのはどうなんでしょうかねぇ」
「勝手にしろ!」

 電話は切れた…ならば勝手にさせて貰うよ。

 1月7日…娘とよう子を連れ、小型トラックをレンタルしてバブリー邸へ向かう。一気にケリを付けてやる。応対に現れたサヤに用件を伝えた。

「親父さんから勝手しろと言われましたので勝手にさせて貰います。失礼しますね」

 バブリー御一家がセレブ気取りで雁首揃えやがって…気に食わんな…今にも胸ぐら掴まれそうな感じだ。

「言っときますが…泥棒でも強盗でもないんで…」

 膝をやられているので2階から物を下ろすのがかなりつらい。痛みを堪えて運んでいると、あろうことかサヤと御老体が娘を説教していた。幾ら何でもこれは筋違いだ。

「説教や異存なら俺に言って頂けますか。この場で○にゴチャゴチャ言っても始まらんでしょ。追い出したんだから」
「追い出してない(泣)!」
「なら…今まであった事を全部喋ってもいいのか?」

 サヤと御老体が俺の大切な娘に詰め寄った。

「○はどうなの(泣)!」「どうなんだ(怒)!」


 ふざけやがって…

「出て行けと言った連中が雁首揃えて○にYESかNOかを迫るのはおかしいだろ!俺の言ってる事は間違ってるか?」

 娘はずっと泣いていた…あまりにも見るに忍びない。

「○…パパは○の気持ちを優先するよ」
「こんな風に○の事でゴチャゴチャになるのは…(泣)」
「よう子、ちょっと…」

 小声でよう子を呼んだ。

「○につらい選択させる事になる。○の気持ちを最優先したい」
「Y君、このまま帰る事も考えようか…揉めれば揉めるほど○ちゃんが可哀想だしさ…あちら様がOKなら荷物まとめて連れてこ…」
「何もせず、ここへ置いとくのも可哀想じゃねぇかよ。○が来てくれるなら絶対連れて帰ろう」

 その時、御老体が言い放った。それは暴言以外の何物でもなかった…

「お前ら二度と私の前に顔を見せるな(怒)!分かったらサッサと荷物運んで失せろ!お前らといい、お前の親(俺の両親)といい、ろくなもんじゃねぇんだ(怒)!」

 ろくなもんじゃねぇだと…死んじまった俺の両親まで非難するのかよ…ある意味、この御老体は凄い御仁だな…

「○…ろくなもんじゃねぇけど、パパの所に来ないか…ここと違って裕福とは言えないが…もしここに残るならさ…ちょくちょく遊びに来てくれるだけでもいい」

 娘は泣きながら決めた。

「ママ…ごめんなさい(泣)パパとよう子おばさんと一緒に住む…お祖母ちゃんが亡くなってからこの家は何かおかしい…(泣)」

 結果的につらい選択をさせてしまった。それでも娘が自分で決めた事だ。それを尊重しよう。そう決めて事を進めた。バタバタと荷物を下ろし、一気に積み込んでトンズラだ。サヤが最後の抵抗を見せ始めた。

「毎週○に会わせてくれるよね(泣)?」
「会わせないと言った覚えは無い。○がOKならご自由にどうぞ…サヤさんは母親なんだから。但し、あんた達の都合で○を振り回すのだけは絶対に許さん。それが守れないならお断りします。それが…ろくでもない奴が決めたルールです。ご了承下さい。○…心配ないぞ。ママと会いたいらなら自由に会って構わないよ」
「うん…ごめんねママ…(泣)学校にはちゃんと行くから…」

 声高らかに堂々の勝利宣言をしたいところだが、娘の気持ちを思うと…控える事にする。娘の心の痛みと、サヤとの関係を引き裂いた後味の悪さが残った…だが、もうこの家に用はない。脱兎の如くバブリー邸を後にした。

 しかし、ここで終わりじゃない。娘の健康保険や扶養の手続き・学校への連絡・通学定期券の購入・住民票の移動・諸費用の口座振替など…簡単に解決出来ない事ばかりだが、泣き言を言ってる暇は無い。順序やバランスやタイミングを考え、ひとつひとつ確実に片付ける。前に進むにはそれしかない。

 持ってきた荷物をマンションに運び入れる。あの狭い部屋に全部入るだろうか…?とりあえず入りきらない物は俺の家に置けばいいか…娘はノートPCを持っていた。後でネットだけでも使えるようにしてやらにゃ…その旨を娘に話すとスマホを持っているから大丈夫と言う。よう子が…

「ネット使う時はさ、あたしのデスクトップ使ってよ(^^)ちっちゃい画面だと見難いでしょ」
「よう子おばさん…ありがとう…(^_^;)」

 ちっちゃいって言葉は禁句だと言っとるじゃんか…あまり気にする事もないのだろうか…?

 その夜、三人のこれからを話した。娘が…

「朝の早起きチョーつらいな…(^_^;)」
「○ちゃん、朝はあたしが車で駅まで乗せてくよ(^^)帰りは無理だけど、帰りは駅からバス乗れば、すぐそこにバス停あるから。結構、本数もあるから便利だと思うのよ。それから…はいこれ(^^)ここのカギ渡しとくね」

 少し時間は掛かるが通学は何とかなりそうだ。娘には少しずつ少しずつ慣れてくれたらいい。よう子は俺の娘と友達のように話そうとしている。娘が寝てから訊いてみた。

「何とかなりそうか…?」
「もう少しかな…まだちょっと遠慮してるよね。今日も色々あったし、あんな言われ方されたら傷付いただろうしさ…馴れ馴れしいと思われるかもしれないけど、変にかしこまるよりいいとかなって思って…気軽に話し掛けて貰えるようになれたらそれでいいかなって思ってんのよ。それとさ…もう少し広い部屋を早めに用意してあげないとね…」
「そうだな…」

 早く俺の収入を上げて安定させねば…

 そんな事を思い、地道に黙々と働こうと考えていた矢先…二手から俺は陰口と誹謗中傷の餌食にされていた。ひとつは片付き次第、皆様方にお伝え致します。現在、決着を付けている最中であります。

 もうひとつだが、それは会社…厚顔無恥の給料泥棒だと言われてるようだ。挙げ句の果てには会社に入るクレーム電話の対応を全部押し付けられた。ハウスメーカーからの苦情は事務の女性から全て俺に回される。何で俺なんだと尋ねると、所長の指示だからと言う。クレーム処理係かよ…俺はお客様相談窓口じゃねぇんだ。年明けからつまんねぇイジメしやがって…

『本当に申し訳ございません』

『すぐさま事実関係を確認致します』

『手配の都合で少々遅れておりましてあいすみません』

『弊社担当より折り返し御連絡差し上げます』

『以後、担当者と職方に厳しく注意指導致しますので』

 会社の評判が悪いのは知っていたが、毎日のようにクレームが来るとは夢にも思わなかった。こんな言葉を毎日のように口にしてれば、あっという間に心が荒む…電話を回されるだけで嫌気が差す。今度は一体何で怒られるんだ…?ビクビクしながらの電話対応…精神的ストレスばかりが溜まる。気の抜ける時間は昼飯時の1時間と退勤後だけだ。

『お昼休憩入りますので…』

『お先に失礼します。お疲れ様でした…』

 この言葉を発するのがどんなに待ち遠しい事か…単車に跨るとピリピリとした緊張感から解放される。今日もやっと終わったと…

 っていうか…所長・営業担当者・現場管理者は外出先で何やってんだ?連絡すら取れない事が多い。先方から担当者と連絡が取れないから大至急と言われれば、こっちも急ぐ。全部を把握していないから慌ててバタバタし、担当者と連絡もつかず、痺れを切らした先方から催促され、最後はお叱りの言葉を頂戴する。こっちも必死で連絡してる訳でケータイには着信履歴が残る筈。短時間で何度も会社から着信があれば、至急だと思うでしょ。それが全くの梨の飛礫(なしのつぶての変換はOKですかねぇ?)それを考えると、昔の同志は手間要らずの世話要らずだった。今更、懐かしんでも仕方ないが…

 そんな連中の相手など真面目にやってられん。アナログな手法に出る。人数分のノートを自腹で購入し、その日あった連絡内容を記し、その後の処理と内容を書いてくれと全員に頼んだ。毎朝、連絡ノートを回収して確認する。処理してなければ、すぐに対応して下さいとお願いまでした。真面目に処理して内容を書く奴はまだ良い方。連絡すらせずに処理済とウソを書き、サッサと外出する奴・完全に無視して見もしない奴と様々だ。ここまでやってやってもこの有り様かよ…その事を所長という肩書きのボンクラ野郎に話すと、みんな忙しいからと言う。外勤の奴らは日報を書いている。内容を見ると、巡回とか商談としか書かれていない。巡回…?今日何件の現場を巡回し、工事の進み具合を確認したか?商談…?いつどこでどんな商談をし、具体的な成果はあったのか?俺は何件の現場を回って打ち合わせ内容を書き、工事の進み具合や処理した結果をキチンと書いた。こんなお粗末な日報なら書く意味無い。紙と時間の無駄遣いでしかない。そんな適当日報に判子捺す所長…俺もろくなもんじゃねぇが、こいつらもろくなもんじゃねぇわ…

 連絡ノートのチェックを始めて数日後、俺はお客様からしこたま怒鳴られた。担当者にちゃんと伝えているのかと…あの野郎…先方に連絡すらしてねぇのかよ。

『本日中に必ず連絡させます。申し訳ございません』
『あんた!名前は(怒)?』
『Yと申します…(何度も言ってるが…)』
『連絡無かったらお前が現場に来い(怒)!』

 行ければ行ってるよ…さて…シカト野郎を捕まえて何がなんでも連絡させねば…

 夕方、そのシカト野郎が帰って来た。その野郎を仮にWとしましょう。

「お疲れ様です。Wさん、連絡ノート見てますか?」
「見てるよ…(面倒くさそう)」
「先方が連絡無いからかなり怒ってます。昼間、何回もケータイに連絡あったでしょ?折り返してくれないと困ります」
「こっちも忙しいんだよ。いちいち相手してられねぇしよ~」

 全く反省の色すら見えない。

「んじゃ、お疲れ~」

 帰んのかよ!?嫌がらせ…?放置プレイ…?右膝が生きてればミドルキック出してぇよ…肋ゴッソリやってやりたかった。

「帰る前に連絡して貰わねぇと」
「用事あっからさ~」

 何だと…!?このバカにつける薬は無いようだ。

「どうやらノートは無駄なようですね。お疲れ様でした…」

 仕方なく俺が先方へ連絡した。

『明日の午前中に自分が現場へお伺い致します』
『何時(怒)?』
『9時半には…』
『8時半に来い(怒)!』
『かしこまりました…』

 ボンクラ所長に連絡する。

『明日の朝、○○の現場に呼ばれましたので自宅から直行します。大変ご立腹の様です』
『何で?W君は?』
『連絡もしないでサッサと帰りました』
『何で?』
『知らねぇよ!!』 続
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